見て盗む そんな時代

I氏の図面に魅せられて

富ヶ谷の事務所

見て盗む そんな時代

I氏の図面に魅せられて

新卒でゼロファーストというデザイン事務所での生活が始まるわけだが、そのプロダクトチームを仕切っていたのがI氏だった。プロダクトチームの主な仕事は、家具メーカーさんの新商品を開発すること。市場調査からイメージ作成、デザイン提案を経て、それを図面化していく。開発商品のほとんどがI氏の手がけたデザインで、（もちろん両社長のチェックも入りますが）その人が描くスケッチや図面が写真を見ているかのように本物が浮かび上がる描写だった。初めて見た時の衝撃を今でも覚えている。

当時はもちろん手描き。昔ながらの徒弟制度ではないが、技量を覚えるのにI氏の描くところを見て真似て盗むしかなかった。よくやらされたのが、あがった図面の寸法描き。サンスケであたりながら寸法線、数値を入れていく。教わる立場としては、モジュールや仕口の勉強にもなるので理にかなっていたんだと思うが、数値を描くのにテンプレートを使っていたので、少し面倒くさかったのかもしれないと今では思っている。

当時４０前のその上司。その頃からだんだん白髪が増え始め、お前のせいで白くなったとよく冗談で言われたものだ。